中国:法定上限を超える損害賠償額を認めた特許侵害事件

中国:法定上限を超える損害賠償額を認めた特許侵害事件

January 14, 2020 / Blog, Case Comment, Featured Author
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2018年4月、北京知識産権法院は、事件番号:(2015)京知民初字第2453号の特許侵害訴訟(Darts-ip文書ID:darts-798-685-F-zh)の判決において、原告の損失、被告の利益、またはライセンス料を計算することが困難であるとして、法定賠償上限額である100万人民元(約1,522万円)を超える損害賠償を認めた。

事件の概要

2015年、原告Feitian Technologies Co.、Ltd.(以下「Feitian社」という)は、被告Beijing Infosec Century Technology Co.、Ltd.およびWuhan Infosec Technology Co、Ltd.に対して、特許侵害訴訟を北京知識産権法院に提起した。裁判では、両被告による原告特許権の侵害が認められ、損害賠償額の認定が中心的な争点となった。

中国特許法第65条に基づいて、原告は「原告の損失」の計算法に基づいて500万人民元(約7,911万円)の損害賠償を求めた。これは、両被告が販売した権利侵害製品の総数に原告オリジナルの特許製品の一製品あたりの合理的利益額を乗じたものであった 。
裁判中、原告は、両被告が販売した権利侵害製品総数を証明できなかったので、実際の原告側損失を証明できなかった。しかし、原告が法定賠償上限をはるかに上回る損害賠償を請求したため、単純な損害賠償額認定問題の枠を超えて、認定される損害額は法定賠償上限額を超えることができるか否かが争点となった。

裁判所の判断

北京知識産権法院は、広東高等裁判所の判決を参照し、「こうしたケースでは、侵害による権利者の損害額または侵害者の取得した利益を証明するのが困難で、さらに当該損失もしくは当該利益が法定賠償限度額を超過することを示す証拠があった場合、損害賠償額は、すべての証拠を総合的に考慮して法定賠償限度額を超えた賠償金額が合理的に認定されるものとする(中略)このようにして初めて、損害賠償によって侵害の結果生じる損失を回収することができ、賠償の基本原則に準拠することとなる」とする判決を下した。
北京知識産権法院は、損害額を判断する過程で4つの要因を検討した。

1. 特許の種類は発明であり、先行技術に対して具体的な特徴と顕著な進歩性を有している。

2. Feitian社が主張した一特許製品あたりの利益10人民元(約160円)は合理的な算出であると考えられる。また、被告製品が非常に大きな市場シェアを占めていることは証拠から明らかである。

3. 権利侵害製品は、中国全土をカバーする巨大な組織構造を持っていた両被告の主要製品の1つであった。この事実からも、被告が販売した権利侵害製品の数が非常に多かったことが分かる。

4. 特許技術は被告製品に用いられている技術の一部であるため、技術的貢献度も損害賠償額の認定において考慮されるき要素である。

したがって、提示されたすべての証拠を検討した後、裁判所は、Feitian社の経済的損失を補償するためには、法定賠償上限額を超える200万人民元(約3,164万円)の損害賠償を認めるのが妥当であるとの判決を下した。

本判決に基づく考察

法定補償限度額は裁量権に対する法的制限であり、ほとんどの場合その上限を超えることはできない。ただし、侵害による損失額または法定賠償額の上限を明らかに超える侵害者の利益額を裏付ける十分な証拠がある場合、あるいは、上限がなかった場合に侵害者に課せられ得る損害賠償額に鑑みて法定賠償に上限が設けられていることが侵害者に不合理な利益をもたらす場合、にのみ例外が発生する。

Darts-ipが集計した特許侵害訴訟の統計データによると、67件の中国特許侵害事件において、特許権者の損失額、侵害者の利益、または特許ライセンス料の計算が困難であるとして、裁判所が法定賠償上限額を超える損害賠償を認定した。当該67件の事件のうち、認定された損害賠償の最高額は、Huawei Device Co.、Ltd. 対 Huizhou Samsung Electronics Co.、Ltd.の事件(Darts-ip文書ID:darts-705-503-E-zh-2)の8,000万人民元(約12億6,580万円)である。

検索手順:

1. 「裁判所」フィルターにおいて「中国」を選択

中国を選択

 

2. 「ファーストアクションの種類」フィルターから「侵害訴訟」を選択

侵害訴訟を選択

 

3. 「損害賠償」検索を開いて「通貨」のプルダウンメニューから「CNY(中国人民元)」を選択。次に、「侵害」項目において「計算方法」として「未定義の計算方法」を、「高/低」の項目で「より高い」をそれぞれ選択し、最後に「総額」欄に「1,000,000」と数値を入力。

損害賠償額の指定

 

4. 「インサイト」ボタンをクリックすると、統計データがグラフ表示される。

図1は、上記67件の事件のうち直近10年のものについてその年推移を示している。上限額を超える損害賠償を認めた判決(折れ線グラフ)が年々増えていることが分かる。図2は、上記67件の事件の地理的分布を示している。北京、浙江、広東、江蘇の各裁判所と最高裁判所で全体の約70%を占めている。

図1 直近10年の年推移                                  図2 事件の地理的分布

 

さらに、法定賠償上限額を超える損害賠償額を認定すべきか否かを判断する際には、下記の要因が考慮されることが分かる。

・特許の革新性(通常、発明の場合、実用新案および意匠よりも顕著な進歩性が要求される。)

・特許の影響性(当該特許が標準必須特許か、もしくは何らかの賞を受賞しているのか?)

・侵害行為(製造、使用、販売、販売または輸入の申し出)

・侵害者の悪意による主観的な行為

・侵害の規模および期間

・特許製品に用いられている技術のうち特許技術が占める割合

・一特許製品あたりの合理的な利益額

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著者 : Darts-ip中国特許リーガルアナリスト 何园园(He Yuanyuan)

翻訳:Darts-ip日本チーム

※事件数および円換算値は2020年1月13日現在のものです。

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