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セレコックス特許、知財高裁で敗れる -特許庁の審決を逆転-

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Darts-ipユーザである弁理士田中康子様(エスキューブ株式会社)より、製薬分野で最近注目の特許判決についてご寄稿いただきました。

 

セレコックス特許、知財高裁で敗れる -特許庁の審決を逆転-

令和元年11月14日判決 知財高裁 平成30(行ケ)10110, 10112, 10115(darts-881-506-H-ja

 

背景:

GDサール(現ファイザー)は、発明の名称を「セレコキシブ組成物」とする特許3563036号を有している。本特許の実施品にあたる、セレコキシブを有効成分とする、関節リウマチや各種の痛みの治療剤であるセレコックス®は、アステラスとファイザーが併売している。セレコックスの再審査期間は2015年1月25日に満了したが、特許があるために後発品は上市されていなかった。
そんな中、2016年9月30日、国内の大手後発医薬品メーカーである東和薬品が、上記特許に対して無効審判を請求し、後発品メーカー5社が東和薬品側に参加した。

 

本件発明:

特許3563036号
請求項1:
一つ以上の薬剤的に許容な賦形剤と密に混合させた10mg乃至1000mgの量の微粒子セレコキシブを含み,一つ以上の個別な固体の経口運搬可能な投与量単位を含む製薬組成物であって,粒子の最大長において,セレコキシブ粒子のD90が200μm未満である粒子サイズの分布を有する製薬組成物。

 

判決:

特許庁の無効審判では、明確性要件、サポート要件と実施可能要件、新規性、及び進歩性の4つが争点とされたが、審決では、本件特許はこれらすべてを充足するとして特許維持審決がされた。これに対して、審判請求人の東和薬品、参加人のニプロ及びヘキサールが、知財高裁に特許維持審決の取消を求めて提訴した。
知財高裁では、サポート要件のみが争点とされ、本件発明は明細書でサポートされていないとして、特許庁の審決を覆して特許は無効であるとの判決が出された。

 

サポート要件に関する議論:

日本では、サポート要件は特許法第36条第6項第1号で、「公開されていない発明について権利が発生することを避けるため、請求項に係る発明が発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものであってはならない。」と規定されている。
また、本件発明は、「セレコキシブ粒子のD90が200μm未満である粒子サイズの分布を有する」という数値範囲による特定を含むが、知財高裁は、この様な数値限定発明について、特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識から、当該発明に含まれる数値範囲の全体にわたり当該発明の課題を解決することができると認識できるか否かを検討して判断すべきものと解するのが相当であると述べた。
その上で、本件明細書の発明の詳細な説明の記載及び本件優先日当時の技術常識から、当業者が、本件発明に含まれる「粒子の最大長において,セレコキシブ粒子のD90が200μm未満」の数値範囲の全体にわたり本件発明の課題(生物学的利用能が改善された固体の経口運搬可能なセレコキシブ粒子を含む製薬組成物を提供すること)を解決できると認識できるものと認められないから、本件発明は、サポート要件に適合するものと認めることはできないと判断した。

 

コメント:

本件でも、サポート要件だけを理由に特許が無効とされた。2019年のコラムで繰り返し取り上げたように、サポート要件や実施可能要件といった記載要件違反だけを理由に特許の無効が判断されるのは、最近の傾向である。さらに本件では、数値限定発明のサポート要件の判断は特に厳しいということを思い知らされた。

医薬品の分野の知財高裁判決において、サポート要件が争点となったケースは、2016年には2件、2017年には3件だったが、2018年以降は18件と、急激に増加している。

セレコックス特許、知財高裁で敗れる -特許庁の審決を逆転-

このうち、サポート要件を満たすという結論になったもの、それぞれ1件、2件、12件、満たさないという結論になったのは1件、1件、6件であった(Darts-ipの分析による)。本件以外の最近の事件としては、以下が挙げられる。

令和元年11月11日判決 平成31(行ケ)10003(darts-549-632-H-ja
平成30年9月18日判決 平成29(行ケ)10045(darts-613-625-F-ja
平成30年9月4日判決 平成29(行ケ)10172(darts-585-838-F-ja
平成30年9月4日判決 平成29(ネ)10105(darts-585-833-F-ja

尚、本判決を受けて、早ければ2020年2月に、セレコックスの最初のジェネリックが承認される可能性がある。

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