Darts-ipの新しいブログ著者である、慶応義塾大学 言語学助教の五所万実様より、ご寄稿いただきました。今回の記事が初めての投稿となります。
二段併記商標にかかる「社会通念上の同一性」問題:
FC2登録商標「ブロマガ\BlogMaga」取消審決取消事件

二段併記商標にかかる「社会通念上の同一性」問題: FC2登録商標「ブロマガ\BlogMaga」取消審決取消事件

Darts-ipの新しいブログ著者である、慶応義塾大学 言語学助教の五所万実様より、ご寄稿いただきました。今回の記事が初めての投稿となります。

二段併記商標にかかる「社会通念上の同一性」問題:
FC2登録商標「ブロマガ\BlogMaga」取消審決取消事件

平成30年12月20日判決 知財高裁 平成30年(行ケ)第10102号 審決取消請求事件(「ブロマガ」事件) (jp-平成30(行ケ)10102 darts-930-404-F-ja

平成30年12月20日、知財高裁は、FC2(原告)の登録商標「ブロマガ\BlogMaga」に対する取消審判請求において、特許庁における審決(平成30年3月22日 取消2016-300709号事件; jp-T2016-300709_J2 darts-912-283-E-ja-2)を支持し、株式会社ドワンゴ(被告)の請求を認める判決をした。

blogmaga
図1 FC2の登録商標「ブロマガ\BlogMaga」(登録第5621414号)

はじめに

不使用取消審判においては、登録商標と厳密に同一でなくても、「社会通念上同一」と認められれば、登録商標の使用とみなされ、取り消しを免れることができる(cf. 「ハイガード」事件;jp-T2013-300258_J2
darts-499-434-D-ja-2)。登録商標と「社会通念上同一と認められる商標」の具体例については、平成30年12月30日改正前の商標法50条1項(商標登録の取消しの審判)において、以下の通り示されている。

登録商標(書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標、平仮名、片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであつて同一の称呼及び観念を生ずる商標、外観において同視される図形からなる商標その他の当該登録商標と社会通念上同一と認められる商標を含む。以下この条において同じ。)

上記、登録商標の例示部分は、改正後、商標50条からは削除されたが、38条(損害の額の推定等)4項において同様の規定がなされている。

争点

本事案では、欧文字とその表音の二段併記からなる登録商標「ブロマガ\BlogMaga」(以下、「本件商標」)のうち、表音部分の「ブロマガ」と、欧文字部分の「BlogMaga」は、本件商標と社会通念上同一と認められるか否かが争点となった。

審決の要旨

本件商標のうち、上段の「ブロマガ」のみからなる商標と、下段の「BlogMaga」のみからなる商標(以下、まとめて「使用商標」)は、本件商標と「社会通念上同一と認められる商標」とはいえず、商標法第50条所定の登録商標には当たらないから、取消対象役務に係る登録は取り消されるべきである。

判決

原告が使用商標を表示して役務を提供していたことは認められても、本件商標と一部分のみを共有する使用商標は、本件商標と「社会通念上同一と認められる商標」とはいえない。よって、取消対象役務について本件商標の商標登録を取り消すべきであるとした本件審決に誤りはない。

以下に、本件商標と使用商標の「社会通念上の同一性」にかかる原告と被告の主張、及び裁判所の判断を示す。

原告主張 被告主張 裁判所
「社会通念上同一と認められる商標」 該当 非該当 非該当
称呼 ①「g」は脱落して発音される傾向にある、②略語には「二モーラ+二モーラ」の4文字読みが多い、③「BlogMaga」は、一般的に「ブロマガ」と称呼・表示されていたことから、「ブロマガ」と「BlogMaga」の称呼は同一。 「ブロマガ」と「BlogMaga」は、それぞれ「ブログマガ」、「ブロマガ」の称呼が生じるため、同一の称呼が生じるとはいえない。 社会一般において「BlogMaga」を「ブロマガ」と表記していることが立証されていない。
「ブロマガ」が「BlogMaga」の表音であるとは認め難く、本件商標からは、「ブロマガブログマガ」という称呼が生じるといえる。
観念 「ブログ」と「マガジン」の略語が結合した「ブロマガ」と「BlogMaga」は、「いろいろなブログを配信するサービスである」という同一の観念が生じる。 本件商標、及びその構成文字「ブロマガ」(通常「bromaga」又は「blomaga」と表示)と「BlogMaga」は、いずれも特定の観念を生じない。 本件商標、及びその構成文字「ブロマガ」(同書・同大・等間隔)と「BlogMaga」は、いずれも特定の観念を生じない。
商標の利用実態・社会的認識 原告のサービスは,広く「ブロマガ」として認識されており、「BlogMaga」の欧文字についても、「ブロマガ」と認識・称呼又は表示されている。
URLに用いている「blomaga」は、本件商標と称呼・観念を共通にする。
原告のブログ及び使用役務における「ブロマガ」の周知性を立証する証拠がない。
「blomaga」と「BlogMaga」は、「書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標」ではないし、外観、称呼が異なる造語。
原告のサービスが「BlogMaga」と認識されていたことを示す的確な証拠はない。
「ブロマガ」が原告のサービスを表示するものとして周知であったとしても、「BlogMaga」と「ブロマガ」から同一の称呼及び観念を生じることにはならない。
「blomaga」をURLに使用していたとしても、外観、観念及び称呼のいずれにおいても本件商標と同一とはいえない。

表1 本件商標と使用商標の「社会通念上の同一性」について

コメント

本判決では、「BlogMaga」と「ブロマガ」は、社会通念上の同一の商標と認定されなかった。「ブロマガ」と「BlogMaga」が同一のサービスを示す商標して、需要者が認識していた可能性は十分に考えられるが、日本において「Blog」は「ブログ」という読み方が確立しているという事実と照らし合わせると、「BlogMaga」からは「ブログマガ」という称呼が生じると判断せざるを得ないだろう。

本事案が示すところは、欧文字あるいは漢字と、それに対する規範的あるいは慣習的な読み方から逸脱する読み方を付す二段併記の商標においては、個別に出願登録を行うべきであるということになろう。また、日本語に馴染みのない外国語の商標登録が増え続ける今日、観念及び称呼の認定に係る問題はますます多くなることが予想される。

なお、原告は、新たに「マガブロ」(登録第6039856号)及び「magablo」(登録第6039857号)を出願し、2018年4月27日に登録となっている。


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